経理の担当者から制度のことを聞かれて、その場で答えられなかった。顧問税理士に電話すれば済む話ですが、その一本が「相談」として時間に数えられるのが引っかかって、先週から後回しにしている。そのまま「AI顧問」と打ち込んで検索すると、月額の料金表がいくつも並びます。ただ、その金額で実際に何が来るのかまでは、たいてい書かれていません。

私たちデジタル屋さんは、中小企業に外から入って、デジタル化の順番を決める仕事をしています。AIまわりの相談も受けるようになりました。その立場から見ると、この料金表には読む順番があるように思います。

「AI顧問」は、二つの違うものを指している

AI顧問という言葉が指す2つを並べた図。①人が来る契約は、AIに詳しい人が月に何回か関わり、相談・研修・実際の構築を行うもので、買っているのはその人の時間。月額で売られているAI顧問はほとんどがこちら。②AIが相談相手になる仕組みは、話しかける相手そのものを用意するもので人は来ず、無料で使えるものがあり今日その場で試せる。
同じ看板でも、来るものが違う

「AI顧問」という言葉は、性質のまったく違う二つのものを指しています。一つは、人が来る契約のほうです。AIに詳しい人が月に何回か会社と関わり、相談に乗ったり、社員に使い方を教えたり、実際に仕組みを作ったりします。会社が買っているのは、その人の時間ということになります。

もう一つは、AIが相談相手になる仕組みのほうです。こちらは人が来るわけではなく、自分が話しかける相手そのものを用意する、という話になります。

「AI顧問」として月額で売られているものは、面談・チャットでの相談・研修・導入の伴走といった内容が中心です。つまり、ほとんどが前者、人の時間のほうだと思います。検索したときに「AIが顧問をやってくれるのか」と思って料金表を眺めていると、想像していたものとは別のものを見ていることになります。

もう一つ、看板そのものについて。「AI顧問」を名乗るのに、資格も試験も登録も要りません。税理士や弁護士のような制度になっていないので、名乗った時点で誰も止めません。私たちも同じで、この看板を出すのに許可を取ったわけではありません。だから肩書きの文字だけを見ても、人が来るのか仕組みが来るのかも、相手の力量も、そこからは分からないままです。

文字から分からないのであれば、順番を変えたほうが早いかもしれません。買う前に、自分で確かめられるほうを先に触る。そのうえで、人にしか頼めない部分が残ったら、そこにお金を出す。まずは、自分で確かめられるほうから順に見ていきます。

仕組みのほうは、今日ゼロ円で試せる

AIを相談相手として試す手順を3段階で示した図。1、今週すでに悩んだことを1つ選ぶ。新しい課題を探さず、一度考えて止まっているものを使う。2、結論ではなく前提を渡す。どうすればいいかではなく、自社の状況を説明したうえでこの条件だと何から決めるべきかを聞く。3、返ってきた答えのうち自社では成り立たない部分に線を引く。そこが自分がまだ言葉にできていない条件になる。
答えの正しさではなく、外れ方を見る

AIが相談相手になるほうは、契約しなくても今日その場で確かめられます。無料で使えるものがあり、聞くだけなら費用はかかりません。

向いているのは、誰にも見せずに一度考えを整理したいことだと思います。銀行に持っていく前の資金繰り表の説明のしかた。取引先に断りを入れるときの言い方。就業規則を変えるかどうか迷っているときの、論点の洗い出し。同業の社長仲間に見せるのは体裁が悪く、顧問税理士に聞くと本題からずれる、あの種類の相談です。

試すときのコツは、たぶん一つだけです。結論を聞かずに、前提を渡す。「どうすればいいですか」と聞くと、教科書のような答えが返ってきます。そうではなく、自社の状況を先に説明したうえで、「この条件だと、何を先に決めるべきか」を聞く。返ってきた答えのうち、自社には当てはまらない部分がどこかを見ていくと、自分が何を分かっていて何を分かっていないかが見えてきます。

使い方の基本については、総務省が初心者向けの教材を無料で公開しています。生成AIはじめの一歩という資料で、スライドをそのままダウンロードできます。社内で説明するときにも使えると思います。

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「どれから手をつけるか」を、30分で決める

困っていることは分かっているのに、順番が決まらない。その状態で見積もりを取ると、比べる基準がないまま金額だけが並びます。話を聞いて、先にやることと今期はやらないことを分けるところまでやります。

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人事と数字は、打ち込む前に一度だけ手を止める

ただし、経営の相談には社員の話が混ざります。誰の評価が低いか。誰に辞めてもらうか。それを名前のまま打ち込むと、その相談の扱いが変わってきます。

総務省と経済産業省が出しているAI事業者ガイドライン(第1.1版)は、AIを事業で使う会社を「AI利用者」と呼び、この立場で重要になることの一つに「個人情報の不適切入力及びプライバシー侵害への対策」を挙げています。作る側でも売る側でもなく、使う側にも自分の持ち場があるという整理です。

この持ち場でやることは、二つだと思っています。一つは、名前と、名前が分からなくても本人が特定できる書き方(役職と入社年など)を外してから打つことです。「営業の40代の男性社員」で足りる相談は多く、そこまで削ると、相談の中身も自分で整理できます。もう一つは、使うサービスの設定を開いて、入力した内容が学習に使われる扱いになっていないかを確かめることです。仕事で使う契約では、学習に使わない設定になっているものが多くあります。名前を外す線をどこに引くかは、生成AIの情報漏洩対策|止めるのは2種類だけにまとめました。

社外の会議録音や、取引先が入った資料をAIに渡す場合は、確認する項目がもう少し増えます。そちらはAI議事録作成で最初に決める、音声の預け先に分けてまとめました。

それでも、人にしか渡せないものが三つある

ここまでを実際に試してみると、AIには返せない部分がはっきりしてきます。私たちが見ている限りでは、その部分は三つに分かれます。

一つめは、社外の相場観です。「うちの判断は、同じくらいの規模の会社と比べてズレていないか」。ここはAIには答えられません。学習しているのは公開された文章で、あなたの同業他社が今月どうしているかは、そこには書かれていないからです。返ってくるのは一般論としての標準であって、隣の会社の実際ではありません。

二つめは、先月の話を覚えていることです。相談のたびに背景を一から説明し直すのは人間相手でも面倒ですが、AIは会話をまたぐと前提を持ち越さないことがあります。設定次第で記録は残せるものの、それを整えて次につなぐのは、結局こちら側の仕事になります。人を入れる契約では、この「覚えておく」ぶんを買っているのだと思います。

三つめは、実際に社内に手を入れることです。アカウントを発行する。設定を変える。社員に説明して、使われる状態まで持っていく。このあたりは、提案の文章では代われない部分です。

言い換えると、この三つが要らないなら、今日試したところで足ります。要るのであれば、そこが外の人に払う理由になります。判断を持ってもらうのか、手を動かしてもらうだけなのかで、頼む相手も金額も変わってくるはずです。契約の中身の見方はIT顧問の選び方|契約前に決める3つと辞め方にまとめました。私たちも近いことを月額でやっているので、この文章は売っている側が書いていることになります。

いまの顧問税理士は、切らなくていい

これは、今の顧問を置き換える話ではありません。申告書を作る仕事と、社内の仕組みを決める仕事は、そもそも領域が違うからです。税理士に「専門外です」と言われて終わった話は、専門外だから返ってこなかっただけで、その人が悪いわけでもありません。聞き先が一つ増えるだけだと考えてもらえればいいと思います。

AIに相談していることを社員に知られたら格好がつかない、という心配も聞きます。ただ、決めているのは相変わらず自分です。人に聞くか、AIに聞くか、両方か。どれを選んでも、決裁の重さは変わりません。

今週やるなら、これだけ

今週すでに一度考えた悩みを、一つだけ選んでください。答えを聞かずに、状況を説明して「何から決めるべきか」を聞く。返ってきた中で、自社には当てはまらない部分に線を引く。ここまでで、たいていは十分ではないでしょうか。

そのうえで「社外の相場観」「覚えておくこと」「実際に手を動かすこと」のどれかが要ると分かったら、そこから先が人に頼む範囲になります。その範囲をどこで切ると費用がいくらの桁になるかは、AI導入支援の費用と選び方|中小企業が先に決める範囲にまとめました。何が要るのかがまだ言葉にならない場合は、会社の課題診断で状況を整理できます。設問に答えると、どこが詰まっているかが出ます。

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