経理を1人に任せている会社で、その担当者から「来月、10日ほどまとめて休みをいただきたいんですが」と言われる。カレンダーを開いて、その間に給与の振込は誰が押すんだったか、納付書はどこにしまってあったか、と考え始める。

ここで全部を引き継ごうとすると、たぶん間に合いません。休んでいる間に遅れても、戻ってから片づけられる仕事のほうが多いからです。先に押さえたいのは、遅れると会社の外へお金が出ていく期日だけで、それは月に2つか3つしかありません。しかも、その本数は会社の人数ではなく、税務署に届出を出しているかどうかで変わります。

経理の期日は2種類しかない

経理の期日は、外に出るものと社内で取り返せるものの2種類に分かれる
先に押さえるのは、外に出る期日だけ。

経理の仕事はどれも期日がありますが、遅れたときに何が起きるかは同じではなく、大きく2つに分かれます。

社内で取り返せるもの。月次の締め、試算表の作成、原価の集計、経費精算の処理。このあたりは1週間遅れても、戻ってから詰めれば元に戻ります。困るのは社長が古い数字で判断してしまうことですが、それは今月中に取り返せる範囲の話だと思います。

会社の外に出るもの。期日を過ぎると、相手が国か従業員か取引先なので、こちらの都合と関係なく結果が出ます。後から取り返すという選択肢がありません。

この2つを混ぜて「経理は全部大事だから」と考えると、担当者が休むたびに全部を止めることになってしまいます。実際に止めなければならないのは、後者だけです。

なお、経理に限らず「どの業務の属人化を先に直すか」という順番の付け方は属人化の直し方|全部やらず止まる順に2〜3個に書いています。ここから先は、そのうち経理だけを取り出して、期日の側から見ていきます。

外に出る期日は、月に2つか3つ

会社の外に出る期日は、次の3つになります。

  1. 給与の支給日。就業規則や雇用契約で決めた日なので、会社ごとに違います。
  2. 源泉所得税の納付。給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納めます(国税庁 No.2505)。
  3. 社会保険料の納付。納付対象月の翌月末日で、4月分なら5月末日になります(日本年金機構)。末日が休日なら、翌営業日以降の最初の営業日になります。

取引先への支払いも外に出ますが、こちらは支払サイトを自社で決めていることが多く、事情を伝えれば数日は動かせます。国と従業員に対する上の3つは、事情を伝えたところで日付そのものが動かないので、先に見ておきたいのはこちらになります。

源泉所得税は、届出ひとつで年12回が2回になる

給与の支給人員が常時10人未満なら、届出で源泉所得税の納付が年12回から年2回になる
出典:国税庁 No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例

ここが、一人経理の負担を一番大きく変えられる場所だと思います。

給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、源泉徴収した所得税を半年分まとめて納めることができます。納期の特例といって、1月から6月までに源泉徴収した分は7月10日、7月から12月までの分は翌年1月20日が納付期限になります(国税庁 No.2505)。

つまり「毎月10日」という期日が、年2回に減ります。使うには「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を、給与を支払う事務所の所在地を所轄する税務署長に提出します。税務署長から却下の通知がなければ、提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされます。

判定の基準は従業員数ではなく「給与の支給人員」で、役員やパートを含めて数えます。逆に、支給人員が常時10人以上になった場合は「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を出す必要があります。自社がどちらに当たるかの判定は、所轄の税務署に確認してください。

すでに特例を使っている会社なら、外に出る期日は「給与支給日」と「社会保険料の翌月末日」の月2つだけで、使っていない会社は月3つになります。まず自社がどちらかを確認したいのですが、これは担当者に聞かなくても、納付書の様式を見るか、税理士に聞けば分かるはずです。

30分・無料・オンライン

「どれから手をつけるか」を、30分で決める

困っていることは分かっているのに、順番が決まらない。その状態で見積もりを取ると、比べる基準がないまま金額だけが並びます。話を聞いて、先にやることと今期はやらないことを分けるところまでやります。

空いている日時を見る →

オンライン(Google Meet)。売り込みはしません。

1日遅れたら罰金、ではない

期日の話をすると不安になりますが、遅れた瞬間に自動でペナルティが発生するわけではありません。ここを正確に知っておくほうが、慌てて判断を誤るより安全だと思います。

社会保険料は、納付期限までに納付が確認できないとまず督促状が送られます。延滞金がかかるのは、督促状の指定する期日までに納付がなく、その期日より後に納付されたときです(日本年金機構)。割合は令和8年(2026年)で、納付期限の翌日から3か月を経過する日までが年2.8%、それ以降が年9.1%です。

源泉所得税は、納期限に遅れると加算税や延滞税の対象になり得ます。国税庁は不納付加算税の取扱いを事務運営指針で定めており、正当な理由があると認められる場合の扱いも示されています。ただし金額の計算は個別の事情で変わるので、遅れそうだと分かった時点で所轄の税務署に連絡してください。

担当者が休んでいる間に1日2日ずれたとしても、そこで会社が終わるわけではない、ということです。本当にまずいのは、期日が来ていることに誰も気づかないまま何週間も過ぎることのほうで、だとすると引き継ぐべきなのは作業手順よりも先に、「いつ、何が来るか」を社長が知っていることになります。

続けてよいかどうかは、この5つで決まる

一人経理を続けてよいかを判定する5つの確認
すべて「はい」なら、経理が1人でも外へ迷惑はかからない。

経理が1人であること自体は、直すべき問題ではないと思っています。中小企業庁の調査では、経理・財務担当の人員数は1人が58.2%で最も多く、0人(社長や親族が兼ねている形)も12.2%あります(中小企業庁「中小企業における会計の実態調査について」・平成27年3月公表・有効回答804件)。10年以上前の調査ですが、1人であることが例外ではないことは分かります。

問題は人数ではなく、外に出る期日を本人以外が実行できるかどうかです。次の5つを確認してみてください。

  1. 給与の振込データを、担当者以外が作成・送信できるか
  2. 源泉所得税と社会保険料の納付を、担当者以外が実行できるか(納付書の保管場所、電子納税を使っているならそのID)
  3. その期日が今月いつ来るか、担当者以外が言えるか
  4. 銀行のワンタイムパスワード生成機やカードが、担当者の引き出しの中だけにある状態になっていないか
  5. 会計ソフト・インターネットバンキング・電子申請のアカウントが、担当者個人の名義と個人のメールアドレスで登録されていないか

すべて「はい」なら、経理が1人でも、その人が休んだ月に会社の外へ迷惑はかかりません。少なくとも、人を増やす理由にはならないと思います。

「いいえ」があれば、そこだけ先に直します。5つ全部を今月やる必要はなく、次に来る期日に関係するものから順に埋めれば足りるはずです。

通帳と承認の話は、切り出し方が違う

担当者に休みの相談をすること自体は、それほど難しくありません。難しいのは上の5つのほうで、通帳、印鑑、銀行のIDに触れる話になるため、休みの相談と同じ入口からは入れません。

分けて考えたいのは、人への疑いと、経路の話です。長く任せてきた人を疑っているわけではない。ただ、通帳と承認が1本の経路しかないと、その人が休んだ日に会社が止まる。この2つは別のことなのですが、切り出し方を間違えると同じことに聞こえてしまいます。

入口としては、期間と対象を限定して、目的を本人の休みに置く言い方があります。

来月10日休まれるとのことなので、その間に来る支払いと納付だけ、私が押せるようにしておきたいんです。やり方を1回だけ見せてもらえますか。

これは「あなたの仕事を誰でもできるようにしたい」とは別のことを言っています。対象が2つに限定され、期間が来月に限定され、目的が本人の休みだからです。

逆に、避けたほうがよい入り方が3つあります。

  • 「内部統制のため」と言う。何のことか伝わらず、疑われているという印象だけが残ってしまいます。
  • 本人がいない日に帳簿を見る。後で分かったときに、休みの相談そのものが二度とできなくなります。
  • 先にパスワードやアカウント名義を変える。手順としては正しくても、順番が逆になります。

休む前の準備全般については仕事の属人化で休めない|休む前に決める2つに書いています。ここで扱ったのは、そのうち経理だけに出てくる「お金の経路」の部分になります。

業務全体の棚卸しは、その後でいい

ここまでの5つが埋まったら、次は業務そのものの整理に進めます。ただ、順番を逆にすると終わらなくなります。棚卸しは範囲が広く、担当者の協力が要り、月をまたぐからです。そのあいだにも期日は毎月来ます。

手順は業務の棚卸しのやり方|1人分・紙1枚で終わる手順にまとめています。

まとめ

  • 経理の期日は「外に出るもの」と「社内で取り返せるもの」に分かれる。先に見るのは前者だけ
  • 外に出る期日は、給与支給日・源泉所得税の納付(翌月10日)・社会保険料の納付(翌月末日)の3つ
  • 給与の支給人員が常時10人未満なら、届出で源泉所得税を年2回にできる。期日の本数は人数ではなく制度で変わる
  • 期限を1日過ぎた時点で自動的にペナルティが出るわけではない。気づかないまま何週間も過ぎるほうが問題
  • 続けてよいかは人数ではなく、その期日を本人以外が実行できるかで決まる

制度の適用や個別の判定については、所轄の税務署・年金事務所、または顧問税理士にご確認ください。ここに書いたのは、一般的な仕組みの説明です。

期日とは別に、メールやサイトで受け取った請求書・領収書の保存も、一人経理で詰まりやすい場所かもしれません。ただし検索要件のほうは、2期前の売上高によっては自社に課されていないことがあります。判定の順序は電子帳簿保存法の検索要件|不要な会社と必要な3項目にまとめました。

私たち合同会社デジタル屋さんは、こうした期日と担当の割り振りを、会社の中に入って一緒に決める仕事をしています。自社の場合にどの期日から手をつけるべきか、というところから相談していただいて構いません。規模と体制によって進め方が変わるため、費用は要相談としています。ご連絡はお問い合わせから。

その前に自社の状態を整理したい場合は、会社の課題診断から始められます。無料・登録不要で、3分ほどで終わります。

お気軽にご相談ください

企画段階のご相談でもOKです。1〜2営業日以内にご返信します。

ご入力いただいた個人情報は、お問い合わせへの対応のためにのみ利用いたします。