「IT導入補助金 2026」と検索して、出てきたページを上から開いていく。締切の日付は並んでいるのに、よく見るとどれも去年やおととしのものです。新しい情報が見つからないまま、タブだけが増えていきます。

これは検索の仕方が悪いわけではなく、補助金の名前のほうが変わったからです。探しているものは、別の名前で今も動いています。

私たちデジタル屋さんは、中小企業に外から入ってデジタル化の順番を決める仕事をしています。補助金の申請代行はしていませんが、「どの業務から手を付けるか」を決める側にいるので、この制度の入口だけは正確に押さえておく必要があります。公式サイトを一つずつ開いて確かめた内容を、順番に見ていきます。

「IT導入補助金2026」で新しい情報が出てこない理由

令和8年度から名称が変わったことが理由で、中小企業基盤整備機構(中小機構。国が作った中小企業支援の法人です)のページに、はっきり書かれています。

IT導⼊補助⾦は令和8年度から「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変わりました。

中小機構 補助金活用ナビ「デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金)のご案内

同じページの本文では、この補助金を「令和7年度補正予算『デジタル化・AI導入補助金』」と呼んでいます。予算の名前と年度の呼び方が少しずれて見えますが、指しているものは同じです。事務局のサイトも「デジタル化・AI導入補助金2026」という名前になっていて、事業の正式名称は「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」です。

やっかいなのは、古いサイトが今も生きていることです。www.it-hojo.jp は「IT導入補助金2023前期以前」の案内窓口として残っているので、検索で先にこちらへ着くと、動いていない制度の説明をひととおり読むことになります。

今の公式サイトは https://it-shien.smrj.go.jp/ です。中小機構から採択を受け、同機構と中小企業庁の監督のもとでTOPPAN株式会社が事務局を運営していると、サイトのいちばん下に書かれています。ブックマークしておくなら、古いほうではなくこちらだと思います。

締切は、公式の1ページだけ見れば足ります

締切の日付は、募集の回ごとに後から追加されていきます。どこかで見かけた日付を覚えておくよりも、公式の事業スケジュールのページを1枚開くほうが早いと思います。

交付申請の受付は2026年3月30日(月)10時に始まりました。2026年9月3日の時点で、日付が入っているのは5次締切分までです。通常枠・インボイス枠の2類型・セキュリティ対策推進枠は、どれも締切日が2026年9月29日(火)17時、交付決定日が2026年11月9日(月)の予定、事業の実施期間が交付決定から2027年4月30日(金)17時まで(予定)となっています。複数者連携デジタル化・AI導入枠の3次締切だけは2026年10月30日(金)17時です。

5次・6次のタブは用意されていますが、日付はまだ出ていません。その理由も公式に書かれています。

※ 確定している募集回のスケジュールのみ公表しております。以降のスケジュールは随時更新いたします。

デジタル化・AI導入補助金2026「事業スケジュール

6次以降の日付はまだ公表されていません。どこかで具体的な日付を見かけたとしても、それは公表されたものではなく推測だと思ってください。次の回を待つなら、このページを月に一度開くのがいちばん確実です。国の枠と自治体の枠で締切の考え方が違う点は、DX補助金2026|その名前の制度はなく、締切は別々のほうに書いています。

もう一つ、時刻にも気をつけてください。締切は24時ではなく17時です。公式にも、締切の直前は申請画面へのアクセスが集中して、画面の切り替えやSMS認証に普段より時間がかかる可能性があると書かれています。締切時間を過ぎた場合は理由を問わず受け付けないとも明記されています。

申請に必須なのは2つだけ。残りは加点です

申請に必須な2つ。GビズIDプライムは発行までおおむね2週間、SECURITY ACTIONは2〜3日
出典:デジタル化・AI導入補助金2026「申請を行う前に必要な手続き」

準備するものが山ほどあるように見えますが、公式が「必須」と書いているのは2つです。

「GビズIDプライム」アカウントの取得、および「SECURITY ACTION」宣言の実施が本補助金交付申請の要件となります。

デジタル化・AI導入補助金2026「申請を行う前に必要な手続き

GビズIDプライムは、国の行政手続きに共通で使うアカウントで、すべての申請枠・類型で要件になっています。ここで効いてくるのが発行までの日数で、公式は「おおむね2週間」としています。SECURITY ACTIONのほうは、情報セキュリティ対策に取り組むと自分で宣言する制度です。「★一つ星」または「★★二つ星」の宣言が要件で、宣言済アカウントIDが出るまでは「おおむね2〜3日」と書かれています。

逆算の出発点になるのが、この2週間です。締切の1週間前に思い立っても、GビズIDプライムの発行が間に合いません。SECURITY ACTIONの申し込み方と、一つ星で足りる理由はSECURITY ACTIONとは?宣言方法と宣言後にやることにまとめてあります。

この2つ以外は、すべて「加点」なので、取らなくても申請そのものはできます。ただ審査では有利になるため、時間に余裕があるなら見ておく価値はあると思います。

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期限に間に合うかだけ、先に確かめる

制度は要件も締切も年ごとに変わります。自社が対象に入るのか、いまから動いて間に合うのか。判断に必要なのはたいていこの2つで、そこだけ確かめるための時間として使ってもらって構いません。

空いている日時を見る →

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2026年度は「ITベンダー以外の第三者に説明する」と加点されます

加点項目の中に、2026年度から入ったものがあります。「デジタル化セカンドオピニオン」といって、通常枠の第3回公募回から始まりました。

デジタル化を成果に繋げていくためには、「業務を良くしたい」「デジタル化を進めたい」といった明確な目的意識を持ち、経営者や責任者自身が粘り強くデジタル化へ取り組むという強い意志が不可欠です。そのため、ITベンダー以外の第三者とのオンライン面談を通じて、デジタル化の目的を改めて説明し、その取組を客観的に確認する機会を得た申請者には交付申請の審査において加点を行います。

デジタル化・AI導入補助金2026「申請を行う前に必要な手続き

読み流しやすい文ですが、言っていることは重いと思います。国が「ツールを売る人以外にも一度説明してください」を、審査の点数として制度に入れたということだからです。裏を返せば、ツールを売る人だけと話して決めた計画がうまくいかない例が、それだけ積み上がっているのかもしれません。

私たちはITツールを売らない立場なので、この「第三者」の側にいます。自社に都合のいい話なので、そこは隠さずに言います。ただし加点を取るには制度側で決められた手順があるので、実際にやるときは公式の申請者向けデジタル化セカンドオピニオンマニュアルを見てください。

加点はほかにもいくつかあります。導入するツールがクラウド製品であること、インボイス対応製品であること、賃上げの事業計画を作って従業員に伝えること、中小機構の「IT戦略ナビwith」や「省力化ナビ」を使うこと、健康経営優良法人やくるみん・えるぼしの認定、中小企業庁の成長加速マッチングサービスへの登録。枠によって対象が違うので、全部は加点項目一覧で確認してください。

補助率は、公的サイト同士で書き方が割れています

通常枠の金額から見ていきます。業務プロセスが1つ以上なら5万円以上150万円未満、4つ以上なら150万円以上450万円以下。補助率は「1/2以内、2/3以内」です。枠は通常枠のほかにインボイス枠が2類型、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠があります。金額の内訳と、どこまでが補助の対象になるかはAI導入支援の費用と選び方|中小企業が先に決める範囲で扱っています。

気をつけたいのは「2/3以内」になる条件のほうで、事務局と中小機構でそれぞれ書いてあることが違います。

事務局の通常枠のページには、令和6年10月から令和7年9月までの間で3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上であることを示した場合、と書かれています。一方、中小機構の表の注記は、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員数が全従業員数の30%以上、となっています。

「未満」と「+50円以内」では、当てはまる会社の数が変わります。どちらが現在の正しい記述なのかは、公開されているページを見比べただけでは確定できませんでした。補助率が1/2か2/3かで金額が大きく動くところなので、自社が該当しそうなら通常枠のページから公募要領のPDFを開いて、そちらの条文で確かめてください。

なお、この補助金の対象は登録されたITツールです。入れたいものがソフトウェアではなく機械や設備そのものであれば、省力化投資補助金とは?補助上限と、見送る会社の条件のほうが近い制度になります。

交付決定より前に発注すると、対象になりません

申請の流れ6段。交付決定の前に契約・発注・支払いをすると補助の対象から外れる
出典:中小機構「デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金)のご案内」の申請の流れをもとに作成

取りこぼしがいちばん多いのがここで、順番が決まっているぶん、途中を飛ばすことができません。

交付決定の通知が届く前に契約や発注や支払いをすると、その分は補助の対象から外れます。先に払っておいて後から補助金で戻してもらう、という順番が使えないということで、交付決定より後に自社が代金を払う点は変わりません。ツールの営業から「先に契約しておいて、補助金は後から出しましょう」と言われたら、そこで一度止めたほうがいいと思います。

もう一つ、逆算する先を間違えないことです。締切に間に合わせて申請することがゴールに見えますが、本当の期限は事業実績報告のほうにあります。5次締切分でいえば、交付決定が2026年11月9日(月)の予定で、事業の実施と実績報告の期限が2027年4月30日(金)17時(予定)。この間に、契約・導入・支払い・報告まで全部を入れることになります。年度末に導入作業が重なる会社なら、ここは先に社内の予定と突き合わせておいたほうがいいと思います。

申請しないほうがよい場合もあります

補助の対象になるのは、IT導入支援事業者が事務局に登録したITツールだけです。中小機構のページにも「『IT導入支援事業者』が登録したITツールのみが補助対象となるため、事前に公式サイトで確認が必要」と書かれています。

この制約が、順番をひっくり返してしまうことがあります。本来は「うちのどの業務が詰まっているか」を決めてからツールを選ぶはずが、「補助が出るツールの一覧」から選び始めてしまう。半額になるという理由で、必要でないものが社内に入ります。入ったあとに使われなければ、自己負担として払った分だけが確実に減っていきます。

それから、補助金を受け取ったあとには効果報告があり、これが何年か続きます。報告する数字を出せない業務を対象にすると、あとで自分の首が絞まることになります。「今より何がどれだけ良くなったか」を数えられる業務を選んでください。

どの業務から手を付けるかがまだ決まっていないなら、補助金より先にそちらだと思います。会社の課題診断で当たりを付けられます。無料で、3分ほどで終わります。

明日の朝、社内で誰に何を頼むか

明日の朝から動かすとしたら、頼めることは3つです。

  • 経理か総務の担当者に、GビズIDプライムをすでに持っているか確認してもらう。持っていなければ、次の締切を待つ間に取っておく。おおむね2週間かかります
  • 自分で 事業スケジュールのページを開いて、6次締切の日付が出ているかを見る。出ていなければ、月に一度開く用事としてカレンダーに入れる
  • 「今いちばん時間を取られている業務」を3つ、紙に書き出してもらう。ツールの名前ではなく、業務の名前で

3つ目は補助金の話からいちばん遠く見えますが、いちばん効くところだと思います。デジタル化セカンドオピニオンの説明にあったとおり、審査で見られているのは「経営者自身に目的があるか」だからです。

なお、デジタル屋さんは補助金の申請代行はしていません。私たちの仕事は、会社の中に入って「どの業務をデジタル化するか」を一緒に決めるところです。状況によって関わり方が変わるため、費用は要相談としています。申請そのものを進めたい場合は、事務局の相談窓口か、IT導入支援事業者に当たってください。代行を頼むかどうかで迷っているなら、補助金申請代行は費用で選べるか|残る作業と支払いも合わせてどうぞ。順番のほうで迷っているなら、お問い合わせから声をかけてもらえれば1時間の無料相談で話せます。

ツールを入れる前に、社内の誰が何を見るのかを決めておきたい、という段階の話はIT顧問の選び方|契約前に決める3つと辞め方のほうにまとめています。

この記事で参照した一次情報

制度の内容は今後も更新されます。金額や日程を自社の判断に使うときは、必ず上の公式ページで最新の記述を確かめてください。

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