補助金・助成金

事業継続力強化計画のメリット⁠|加点・金利・税制と注意点

公開 更新 文:和泉 みなと
事業継続力強化計画の認定を受けるメリットは、補助金の審査での加点、日本政策金融公庫の金利の引下げなどの金融支援、防災設備の特別償却16%の3つが中心です。ただし加点がつく補助金は5つに限られ、IT導入補助金は入っていません。

この記事では、補助金の申請や設備投資を控えていて、認定を取るかどうかを決めたい中小企業の経営者の方に向けて、次の7つをお伝えします。

  • 事業継続力強化計画とは(BCPとの違い)
  • メリットの一覧と、それぞれが効く会社
  • 補助金の加点が付く5つの補助金
  • 金融支援と特別償却16%の中身と、効かない会社の条件
  • 認定までにかかる期間(締切から逆算する方法)
  • 計画書で手が止まりやすい欄と、対策ゼロでも出せるか
  • 認定後にやることと、今取るべきかの判断

事業継続力強化計画とは|BCPとの違い

事業継続力強化計画は、中小企業が作った防災・減災の事前対策の計画を、経済産業大臣が認定する制度です。中小企業庁の事業継続力強化計画のページでは「中小企業のための取り組みやすいBCP」と位置づけられていて、認定を受けると税制措置や金融支援、補助金の加点などを受けられます。

BCPは自社で自由に作る計画で、決まった様式も認定もありません。事業継続力強化計画のほうは国が様式を決めていて、要件を満たせば経済産業大臣の認定が出ます。認定があるから、加点や税制や金利の引下げが付いてきます。分量も、細かく作り込んだBCPに比べればずっと軽いものです。BCPを作る前の一歩として取る、という使い方でかまわないと思います。

自社だけで出す単独型と、複数社で組む連携型があります。連携型は、令和8年7月末までの認定102,591件のうち1,988件と全体の2%ほどで、ほとんどの会社は単独型で認定を受けています。以下のメリットと手順は単独型の場合です。

事業継続力強化計画のメリット一覧

認定を受けると使えるようになるものを、効く会社と並べると次のとおりです。

メリット中身効く会社
補助金の加点5つの補助金の審査で加点される加点対象の補助金に申請する予定がある会社
金融支援日本政策金融公庫の金利引下げ、信用保証の別枠設備や運転資金の借入を予定している会社
税制(特別償却16%)対象設備の取得価額の16%を初年度に上乗せして償却できる今期に利益が出ていて、対象設備を買う会社
認定ロゴマーク自社の広報や販売活動にロゴマークを使える取引先に防災の取り組みを示したい会社

認定ロゴマークは、中小企業庁のページで、認定を受けた事業者が自社の広報活動や販売活動に使えると案内されています。以下では、判断を分けやすい上の3つを順に見ていきます。

メリット1:補助金の加点|対象は5つの補助金

加点措置を受けられる補助金。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金、事業承継・M&A補助金、中小企業省力化投資補助金の一般型、小規模事業者持続化補助金の一般型通常枠と創業型
IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)はこの一覧に入っていません

認定を取ると全部の補助金で有利になる、という制度ではありません。認定制度の概要(令和8年7月17日版)の6ページに、加点措置を受けられる事業が名前で挙がっています。2026年9月8日時点では次の5つです。

  • 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
  • 事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠)
  • 中小企業省力化投資補助金(一般型)
  • 小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠)
  • 小規模事業者持続化補助金(創業型)

小規模事業者持続化補助金を一般型と創業型で2つと数えているので5つになります。制度の数で言えば4制度です。

気をつけたいのは、IT導入補助金(現在のデジタル化・AI導入補助金)が、この一覧に入っていないことです。IT導入補助金でも加点されると思われがちですが、デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠の公募要領にある加点項目を最初から最後まで見ても、事業継続力強化計画は出てきません。ITツールの導入で加点を取りたいなら、この認定ではなく、クラウド製品を選ぶ、賃上げ計画を出す、といった別の項目を見ることになります。

反対に、設備投資の補助金を考えているなら効きます。ものづくり補助金と省力化投資補助金の一般型は、どちらもこの5つに入っています。

加点欄は、制度のなかで改定が多い部分です。今日の5つが来年も5つとは限りません。申請の直前に、出す補助金の公募要領で数え直してください。

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期限に間に合うかだけ、先に確かめる

制度は要件も締切も年ごとに変わります。自社が対象に入るのか、いまから動いて間に合うのか。判断に必要なのはたいていこの2つで、そこだけ確かめるための時間として使ってもらって構いません。

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メリット2:金融支援|利益が薄い年でも効く金利の引下げ

税制が効かない年でも、金融支援のほうは効きます。認定を受けた事業者は、日本政策金融公庫の融資で、設備資金なら基準利率から0.9%、運転資金なら0.4%の引下げを受けられます。引下げが適用されるのは貸付限度額のうち4億円までで、貸付限度額は国民生活事業で7,200万円、中小企業事業で7億2,000万円です。

0.9%が大きいかどうかは、借りる額と期間で決まります。たとえば3,000万円を10年で借りるなら、単純計算で年に20万円台の差が数年続くことになります。設備を買うために借入をする予定があるなら、税制よりこちらのほうが先に効くはずです。

信用保証協会の別枠もあります。普通保険2億円、無担保保険8,000万円、特別小口保険2,000万円が、通常の枠とは別に用意されます。すでに保証枠を使い切っている会社には意味のある話だと思います。

どちらも、認定を取れば自動的に使えるわけではなく、公庫や信用保証協会の審査は別にあります。使うつもりがあるなら、計画を出す前に金融機関に相談しておくよう、概要資料でも案内されています。

メリット3:特別償却16%|減税ではなく前倒し

特別償却を使わない場合と使う場合の比較。初年度に落とせる額は増えるが、耐用年数を通した損金の合計は取得価額のままで変わらない
差が出るのは、どの年に損金が寄るかです

認定を取ると、中小企業防災・減災投資促進税制が使えます。中小企業庁のページには、認定を受けた日から1年以内に、計画に書いた対象設備を取得して事業に使った場合、特別償却16%の措置を受けられる、とあります。適用の対象になるのは、令和元年7月16日から令和9年3月31日までの間に認定を受けた事業者です。

特別償却は、普通の減価償却とは別に、取得価額の16%を初年度に上乗せして損金にできる仕組みです。たとえば100万円の自家発電設備なら、初年度に16万円分を余計に落とせます。

ただし、その16万円は翌年以降の償却費から前借りしているだけで、耐用年数を通した損金の合計は変わりません。減税ではなく、課税の時期をずらす仕組みです。だから、今期に利益が出ていて税金を払う予定がある会社には効きますし、赤字の年や利益がほとんど出ていない年に使っても、ほぼ何も起きません。むしろ翌年以降に落とせる分が減るので、来年から利益が出そうな会社にとっては損な入れ方になることもあります。どちらに転ぶかは決算の見込み次第なので、顧問税理士に決算の数字を見せて相談するのが確実です。

対象になる設備は決まっていて、取得価額の下限もあります。機械装置は100万円以上(自家発電設備、浄水装置、揚水ポンプ、排水ポンプ、耐震・制震・免震装置など)、器具備品は40万円以上、建物附属設備は60万円以上です。金額が下限に届かない備品は対象外になります。

認定を受けられても、税制を使えない会社がある

認定を受けられる会社と、税制を使える会社は、範囲が違います。概要資料の1ページに、税制措置の対象となる企業は認定を受けられる対象企業の全てではない、と注意書きが入っています。認定のほうは製造業その他なら資本金3億円以下または従業員300人以下で受けられますが、税制のほうは青色申告をしていて資本金1億円以下であること、といった条件が別にかかります。大規模法人から2分の1以上の出資を受けている会社や、前3事業年度の平均所得が15億円を超える会社は外れます。

認定までの期間|GビズIDと審査45日から逆算する

認定までの流れ。GビズIDの取得に最低2週間、計画作成、電子申請、審査の標準処理期間45日、そのあと補助金の申請
GビズIDを持っていない状態から始めると、2か月前後を見ておくことになります

この計画は、出せばすぐ認定されるものではありません。中小企業庁の認定制度の概要(令和8年7月17日版)に、審査の標準処理期間は45日と書かれています。この45日は、申請が受け付けられてから認定通知が出るまでの日数です。

申請の前にも、待ち時間があります。申請は電子申請システムからしかできず、ログインにはGビズIDのアカウントが要ります。同じ資料に、GビズIDの取得には最低でも2週間程度必要、と書かれています。IT導入補助金でも同じアカウントを使うので、その話はIT導入補助金2026の記事に詳しく書きました。すでに持っているなら、この2週間は飛ばせます。

つまり、GビズIDを持っていない状態から始めると、認定が下りるまでに「2週間+計画を書く時間+45日」がかかります。計画そのものはA4で数枚のものですが、逆算すると2か月前後は見ておくことになります。

ここで確かめてほしいのが、狙っている補助金の公募要領の加点欄です。「認定を受けていること」と書いてあるのか、「申請中でも可」と書いてあるのかで、間に合うかどうかの答えが変わります。この条件は補助金ごとに、しかも公募回ごとに違うので、出す回の公募要領を自分で開いて確かめてください。間に合わないなら、今回は加点なしで出すと決めてしまってよいと思います。加点は必須の要件ではありません。

計画書の書き方|手が止まりやすいのは「情報」の欄

様式は策定の手引きに記載例つきで載っています。ハザードマップで自社の所在地の想定被害を確かめるところから始まり、初動対応(安否確認、避難、被害の把握)、ヒト・モノ・カネ・情報それぞれの事前対策、平時の推進体制、と進みます。

このうち手が止まりやすいのが「情報」の欄です。ヒトは連絡網、モノは設備の固定や在庫、カネは保険と手元資金と、書くことが思い浮かびます。ところが情報だけは、何を守るのかが社内で決まっていないことが多いからです。

この欄を埋めるのに要るのは、災害の知識ではなく、いま自社のデータがどこにあるかの一覧です。顧客名簿はどのパソコンにあるのか、会計データはクラウドなのか事務所のサーバーなのか、バックアップは誰がいつ取っていて、それを戻したことがあるのか。ここが分かれば、欄に書く文章は自然に決まります。書き出し方は情報資産管理台帳の記事にまとめました。

この欄では、地震や水害だけでなく、データが人為的に使えなくなる場合も想定しておくと後で効きます。ランサムウェアに暗号化されると、事務所が無事でも受注も出荷も止まります。バックアップを別の場所に置くという対策は、災害でもこちらでも同じように効きます。考え方はランサムウェア対策の記事に書きました。

審査でどこが差し戻されやすいかは、中小企業庁が申請計画審査におけるよくある修正依頼という資料で公開しています。書き始める前に一度目を通しておくと、やり直しが減ります。社内に詳しい人がいない場合は、中小企業基盤整備機構が専門家派遣による策定支援も行っています(中小企業庁のページで案内されています)。

「何も対策していない」状態でも出せる

備蓄も、安否確認の仕組みも、停電したときの手順もない。そういう状態で出していいのか、というのは人に聞きにくい質問だと思います。

概要資料の1ページに、この計画は「現在及び将来的に行う災害対策などを記載するもの」と書かれています。すでにやっていることだけを書く報告書ではなく、これから取り組むことを書いてかまいません。いま対策がないことを理由に落とされる制度ではない、ということです。

反対に、書いた以上はやることになります。認定後は計画に沿って取り組み、見直しの時期に状況を振り返ることが前提です。大きなことを並べる必要はないので、実際にやる範囲で書くほうが後で楽だと思います。

認定後にやること|毎年の報告はなく、期間は最長3年

毎年の報告義務はありません。年に1回の実施状況報告が要ると思われがちですが、概要資料の3ページで必要書類として実施状況報告書が挙がっているのは、計画の内容を変える「変更申請」のときと、期間が終わったあとの「2回目以降の申請」のときです。

計画の実施期間は最長3年です。3年が過ぎたら認定は終わり、加点も税制も金融支援も使えなくなります。補助金の加点のために取ったのなら、次に出す予定があるかどうかで、2回目を申請するかを決めることになります。2回目の申請には、直近の計画についての実施状況報告書と、前回の計画書の写しが要ります。何もしていないと書けない書類なので、取ったあとに完全に放置はできません。

なお、代表者が変わった、資金調達の額が少し動いた、といった計画の趣旨を変えない軽微な変更については、変更申請は要らないとされています。

事業継続力強化計画を今取るべき会社・急がなくていい会社

今日から動いたほうがよいのは、加点対象の5つのどれかに出す予定があって、締切まで2か月以上ある会社です。設備を買うのに借入をする予定があるなら、税制が効かない年でも金利の引下げが残ります。GビズIDをすでに持っているなら、待ち時間は45日だけになるので、もう少し締切が近くても間に合う可能性があります。 今月はやらなくてよいのは、直近の補助金に間に合わず、借入の予定もなく、取引先から聞かれてもいない会社です。認定は取っておけばいつか効く性質のものですが、実施期間が3年で切れるので、早く取りすぎると必要なときに切れていることもあります。急ぐ理由がないなら、次に補助金を出すと決めたときに合わせて取るほうが噛み合います。

元請けから取引先向けの確認シートで聞かれている場合は、上の逆算で出した日数を見て、「取得予定」と書けるかどうかを判断してください。認定件数は令和8年7月末で102,591件(地域別認定件数一覧)で、珍しい制度ではなくなっています。

申請の代行を誰かに頼むかどうかについては、補助金の申請代行の記事に、頼んでも自社に残る作業を書きました。この計画に限って言えば、様式は軽いので、社内で書いている会社のほうが多いと思います。

まとめ

  • 事業継続力強化計画は、中小企業の防災・減災の事前対策を経済産業大臣が認定する制度で、「取り組みやすいBCP」と位置づけられている
  • 補助金の加点が付くのは5つの補助金で、IT導入補助金は入っていない
  • 特別償却16%は減税ではなく前倒しなので、今期に利益が出ている会社にしか効かない。利益が薄い年は金利の引下げのほうが効く
  • GビズIDを持っていなければ、認定まで2か月前後を見ておく
  • 計画書で止まりやすいのは「情報」の欄で、必要なのは自社のデータの置き場所の一覧

私たちデジタル屋さんは、社内にIT担当がいない会社に外から入り、デジタル化の順番を決める仕事をしています。申請の代行はしていないので、計画書を書くのは社長です。その前段の、どこに何のデータがあるかを並べるところであれば、外から見る形でご一緒できます。締切に間に合うかどうかも含めて、相談の予約から確かめてください。

出典

WRITTEN BY

和泉 みなと合同会社デジタル屋さん

合同会社デジタル屋さんのAIアシスタントです。中小企業のデジタル活用について、記事の企画と執筆を担当しています。監修:宮原史知

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