この記事では、ものづくり補助金を使って設備投資を考えている中小企業の経営者の方に向けて、次の7つをお伝えします。
- ものづくり補助金は今どうなっているか(新しい制度と2つの公式サイト)
- 第1回のスケジュール(1か月後ろにずれた日程)
- 補助額と補助率(3つの枠の下限と上限)
- 3〜5年の要件(付加価値4.0%・給与3.5%)
- 採択率の推移
- 採択後の交付決定と、申請までにやること
- 出すか、見送るかの判断
ものづくり補助金2026は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」へ
いま「ものづくり補助金」という名前がついているものは、2つのサイトに分かれています。
1つはものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の総合サイトで、事務局の全国中小企業団体中央会が運営する旧制度のサイトです。23次締切の採択結果を令和8年8月7日に公表した時点で、新しい公募の告知は出ていません。今は採択結果の確認と、採択された事業者の事業化状況報告の窓口として動いています。
もう1つが新事業進出・ものづくり商業サービス補助金で、中小企業基盤整備機構のサイトです。今から申請できるのはこちらです。中小企業庁は2026年6月30日に、「6月29日(月)より、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開しました」と告知しています。
新しい制度の公式サイトには「『中小企業新事業進出補助金』と『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金』とは異なる補助金です」とも書かれています。名前が似た制度が並んでいて迷う場合は、DX補助金2026の一覧|パソコンは対象?締切と注意点で整理しています。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回のスケジュール
第1回の日程は、公表当初から1か月後ろにずれています。公式のスケジュールページは変更前の日付に取り消し線を引いた形で載せているので、検索結果の説明文には取り消された側の古い日付が出てくることがあります。
項目 変更前 変更後 公募開始 令和8年6月29日(月) 申請受付 令和8年8月31日(月) 令和8年9月30日(水) 応募締切 令和8年9月30日(水)18:00 令和8年10月30日(金)18:00厳守 採択結果発表 令和8年12月(予定) 令和9年1月(予定)
2026年9月23日時点では、受付開始まで1週間ほど、締切まで5週間ほどです。申請は電子申請システムでのみ受け付けるとされているので、システムに入るための準備は受付開始前に済ませられます。
採択発表のあとは、交付申請(原則、採択発表日から2か月以内)、交付決定、補助事業の実施、実績報告、額の確定、清算払いと進みます。日程は今後も変わる可能性があるので、出すと決めたら、その時点で公式のスケジュールページを開いてください。
ものづくり補助金の補助額と補助率|3つの枠の下限と上限
新しい制度には3つの枠があります。上限額はよく紹介されていますが、10人から50人くらいの会社では、下限のほうで先に対象から外れることがあります。
枠 補助下限額 補助上限額 補助率 革新的新製品・サービス枠 100万円 最大2,500万円(大幅賃上げ特例3,500万円) 中小1/2、小規模企業者・小規模事業者・再生事業者2/3 新事業進出枠 750万円 最大7,000万円(同9,000万円) 中小1/2 グローバル枠 750万円 最大7,000万円(同9,000万円) 中小2/3
下限は経費ではなく、補助金の額で見ます。新事業進出枠で補助率が1/2なら、補助金750万円に対して対象経費は1,500万円以上が必要です。この規模の投資を今期に決められないなら、この枠は最初から候補から外れます。革新的新製品・サービス枠の下限100万円なら、多くの会社が届く水準です。
補助上限は従業員数で変わる
従業員数 革新的新製品・サービス枠 新事業進出枠・グローバル枠 1〜5人 750万円(賃上げ特例850万円) 2,500万円(同3,000万円) 6〜20人 1,000万円(同1,250万円) 21〜50人 1,500万円(同2,500万円) 4,000万円(同5,000万円) 51〜100人 2,500万円(同3,500万円) 5,500万円(同7,000万円) 101人以上 7,000万円(同9,000万円)
たとえば従業員21人から50人の会社が革新的新製品・サービス枠を使う場合、補助上限は1,500万円です。補助率1/2なら、3,000万円の投資までが上限に収まる計算になります。ここに自社の見積書を当ててみると、枠が合っているかどうかがすぐ分かります。
ものづくり補助金の要件|3〜5年の付加価値4.0%・給与3.5%
以前ものづくり補助金を検討したことがある会社ほど、同じつもりで出すと計画の前提がずれます。この補助金は設備を入れて終わりではなく、補助事業が終わったあと3〜5年の事業計画を出して、その期間に数字を達成することが求められます。
補助事業終了後3~5年の事業計画において、以下すべてを満たす必要があります。目標未達の場合は補助金の一部または全額の返還義務が生じる場合がありますのでご注意ください。付加価値の年平均成長率+4.0%以上増加。1人あたり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上増加。事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上高い水準。
中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」
旧制度で求められていたのは、付加価値額の年平均成長率が3%以上、給与支給総額の年平均成長率が1.5%以上、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準、でした。
約束する数字 旧制度 新制度 付加価値額の年平均成長率 +3%以上 +4.0%以上 1人あたり給与支給総額の年平均成長率 +1.5%以上 +3.5%以上 事業場内最低賃金 地域別最低賃金+30円以上 地域別最低賃金+30円以上(据置)
効いてくるのは給与のほうです。年平均3.5%は複利なので、5年続けると1人あたりの給与支給総額はおよそ19%増えます。設備の値段だけで採算を計算すると、この人件費の増加分が入りません。
未達だと返還が生じることがあります。返還の仕組みは、同じ経済産業省系の別の補助金でも共通した考え方で、中小企業省力化投資補助金の側で整理してあります。省力化投資補助金とは?補助上限・補助率と申請できない条件には、補助金が入るのは事業が終わったあとで、設備代は先に自社が全額払う点も書いています。入れたい機械が既製品なら、申請がもっと軽いカタログ注文型のほうが向いていることがあります。補助額の決まり方は省力化投資補助金カタログ注文型とは|補助額の決まり方にあります。
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期限に間に合うかだけ、先に確かめる
制度は要件も締切も年ごとに変わります。自社が対象に入るのか、いまから動いて間に合うのか。判断に必要なのはたいていこの2つで、そこだけ確かめるための時間として使ってもらって構いません。
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ものづくり補助金の採択率|申請者数は2年で5分の1近くに

採択率は、公式が実数を出しています。旧制度の採択結果ページに、全公募回の申請者数と採択者数が載っています。
締切回 採択発表日 申請者数 採択者数 採択率 18次 令和6年6月25日 5,777 2,070 35.8% 19次 令和7年7月28日 5,336 1,698 31.8% 20次 令和7年10月27日 2,453 825 33.6% 21次 令和8年1月23日 1,872 638 34.1% 22次 令和8年4月30日 1,552 582 37.5% 23次 令和8年8月7日 1,275 448 35.1%
減った理由は公表されていないので、ここでは推測しません。ただ、要件が上がっていることと、出す側が「3〜5年の約束を背負えるか」で自分を絞っている可能性は、数字と矛盾しません。
ものづくり補助金は採択後も金額が確定しない|交付決定までの注意
採択の通知が来た時点で、補助金の額が確定したと受け取ってしまいがちです。ここは事務局自身が用語を変えて注意している点です。
旧制度の公式サイトは、15次公募要領以降、「採択」「採択決定」という語の前に「補助金交付候補」という語を挿入したと説明しています。理由として挙げられているのは、補助金が申請どおり満額交付されることが決定したという誤認と、それによるトラブルです。
公表されている実数でも差が出ています。同じページの交付決定状況(集計基準日 令和8年7月8日)です。
締切回 採択者数 交付決定数 19次 1,698 1,505 20次 825 691 21次 638 511 22次 582 225
22次の225という数字は、手続きの途中で切り取った値です。ここだけを見て「4割しか交付されない」と読むのは誤りです。見てほしいのは、手続きが一巡した19次から21次でも、採択者数と交付決定数が一致していないという点です。
採択から交付決定までの間には、交付申請という手続きがあります。新しい制度では、交付申請の締切は原則として採択発表日から2か月以内です。採択の連絡が来てから相見積もりを取り直して2か月というのは、繁忙期に重なると短いと思います。ここを落とすと採択が取り消されるので、採択発表の時期に社内の誰が動けるかまで、出す前に見ておいてください。
ものづくり補助金の申請までにやること

受付開始までの今の時期に決めるのは、書類の中身ではなく着手の順番です。
- 3〜5年の数字を背負えるかを先に決める。付加価値額+4.0%、1人あたり給与支給総額+3.5%。この2つを決算書に当ててみて、無理なら他は見なくていい
- 投資額が下限に届くかを見る。革新的新製品・サービス枠なら補助金100万円、新事業進出枠・グローバル枠なら750万円。届かないなら枠が違う
- GビズIDプライムアカウントを用意する。電子申請システムでのみ受け付けます。持っていないなら今週やる
- 発注はしない。公式が「交付決定日より前に補助事業に係る製品の購入や役務の提供に係る契約(発注を含む)等した経費は、補助対象になりません」と明記しています。急いで先に押さえる、という抜け道はありません
- 事業を終える時期から逆算する。実施期間は新事業進出枠・グローバル枠が交付決定日から14か月以内(採択発表日からは16か月以内)、革新的新製品・サービス枠が10か月以内(同12か月以内)。完了した日から30日を経過した日までに事業報告を出し、額の確定通知を経て清算払いを請求する流れです
この5つは、公募要領を読み込まなくても決まります。そして1と2で対象から外れる会社も少なくないはずです。先に外れると分かれば、書類の準備に使う時間が丸ごと浮きます。
書類を誰に手伝ってもらうかは、1と2を通ってから考えても間に合います。頼む相手の選び方は補助金申請代行の費用|2026年法改正で頼める範囲と選び方にまとめています。
この補助金は、事業継続力強化計画の認定を受けている事業者に加点措置がある補助金のひとつです。認定には申請から45日ほどかかるので、加点を取りにいくなら日数を先に数えることになります。内容は事業継続力強化計画の記事にまとめました。
同じ第1回公募要領では、申請締切日時点で有効なDX認定も加点項目に入っています。DX認定は審査の標準処理期間が60営業日あるので、第1回の締切には間に合いません。次の公募回以降で使うなら、締切の4ヶ月以上前から準備を始めることになります。制度と準備の中身はDX認定とは?メリットと認定基準、中小企業の申請方法にまとめました。
なお、令和8年熊本地震について、公式は2026年9月1日のお知らせで「第1回公募では、熊本県内に所在し、地震の被害を受けた補助事業申請者に対しては、その事情を審査において考慮します」と案内しています。該当する場合は公式のお知らせを直接確認してください。
ものづくり補助金を出すか、見送るか
今の時点で取れる道は3つです。
1つ目は、第1回に出す。締切は10月30日18時です。3〜5年の数字を背負う判断が先で、書類はそのあとです。 2つ目は、第1回は見送って、交付決定を待たなくていい形に組み替える。補助金を待つと、発注できるのは早くても令和9年の春以降になります。それまで現場が今のままでいいのか、という問いは補助金とは別に残ります。設備を丸ごと入れ替えなくても手が空く工程は、たいていどこかにあると思います。 3つ目は、この制度ではなく、別の入口を見る。入れたいものが機械ではなくソフトウェアやクラウドサービスなら、こちらではありません。デジタル化・AI導入補助金2026|旧IT導入補助金の締切と申請に申請先と締切をまとめています。申請受付の開始は2026年9月30日(水)、締切は10月30日(金)18時厳守です。事務局の公募スケジュールで一度後ろへずれているので、他制度とあわせて補助金・制度の締切カレンダーでも追っています。
まとめ
- ものづくり補助金は、2026年から「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に引き継がれた。旧制度のサイトに新しい公募は出ていない
- 第1回は2026年9月30日(水)受付開始、10月30日(金)18時締切、採択発表は令和9年1月(予定)
- 補助金には下限がある。革新的新製品・サービス枠は100万円、新事業進出枠・グローバル枠は750万円
- 3〜5年で付加価値+4.0%、1人あたり給与支給総額+3.5%が必要。旧制度より上がっている
- 採択されても交付決定までは金額が確定しない。交付決定の前に発注しない
この補助金で難しいのは、書類の書き方ではなく、3〜5年後の給与と付加価値を、いま約束できるかどうかです。その判断には「その設備を入れたら、どの工程の手がどれだけ空くのか」が要りますが、設備を売る側にも、申請を支援する側にも聞きにくいところだと思います。
私たちデジタル屋さんは設備も申請代行も扱っていないので、どちらの見積にも寄りません。できるのは、いま止まっている工程を外から並べて、この投資が一番効く場所なのかを一緒に見るところまでです。相談の予約は、見送ると決めた方にもそのまま使えます。
この記事で参照した一次情報
- 中小企業基盤整備機構|新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(補助上限・補助率・事業計画要件)
- 同|公募スケジュール(第1回の日程・実施期間・交付申請の期限)
- 全国中小企業団体中央会|採択結果(申請者数・採択者数・交付決定状況)
- 中小企業庁|新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募について
公募の日付・金額・要件は回ごとに変わります。この記事は2026年9月23日時点の掲載内容をもとにしています。実際に申請する前には、必ずその回の公募要領を開いてください。
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