この記事では、省力化投資補助金のカタログ注文型で機械の導入を考えている中小企業の経営者の方に向けて、次の8つをお伝えします。
- カタログ注文型とは(一般型との違いと、カタログに載る製品)
- 補助額の決まり方(4つの上限)
- 申請の流れ(販売事業者と共同で申請する)
- 補助対象外になる条件
- 申請の要件(人手不足の理由の選び方と、保険の義務)
- 採択後の報告と賃上げの要件
- カタログに載っていなかったときの選択肢
- 見積を取る前に確認すること
省力化投資補助金のカタログ注文型とは|一般型との違い
中小企業省力化投資補助金には、カタログ注文型と一般型の2つがあります。カタログ注文型は、国があらかじめ補助の対象として登録した製品のリストから選んで買う方式です。このリストを、制度の中では「カタログ」と呼んでいます。一般型は、カタログを使わず、その会社の業務に合わせて設計した設備を対象にしています。
「カタログ」とは、本事業においては、中小企業等が簡易・迅速に導入できる汎用製品であって、従前と同等又はそれ以上の付加価値を産出するために投入する労働量を減少させることで人手不足の解消の効果をもたらす製品を、あらかじめ補助の対象として登録した製品のリストを指す。
独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(カタログ注文型)公募要領」1-2(令和8年3月19日改訂版)
カタログは製品カテゴリという単位で並んでいます。2026年9月6日時点で、公式の省力化製品検索に並んでいる製品カテゴリは205ありました。スチームコンベクションオーブン、券売機、配膳ロボット、無人搬送車、5軸制御マシニングセンタ、鋳造用自動注湯機、リネン類畳み機、といった細かさです。
このカテゴリは、工業会などが中小企業庁に登録申請を行い、中小企業庁が業所管省庁と協議して認定すると公募要領に書かれています。つまりカテゴリは、誰かが申請しない限り存在しません。自社の工程に合う良い機械が世の中にあっても、その種類のカテゴリがまだ作られていなければ、カタログ注文型では買えません。
最初にやることは、省力化製品検索を開いて、自社の工程に当たるカテゴリがあるかを見ることです。5分で済み、無ければこの型の話はそこで終わります。
カテゴリがあっても外れることがあります。登録された業種・業務プロセス以外の用途に使う事業は補助対象外です。公募要領は、「業種:飲食業、業務プロセス:調理」として登録されている製品を家事のために使う例を挙げています。同じ機械でも、登録されている使い方と違えば対象になりません。
カタログ注文型の補助額の決まり方|4つの上限のうち一番小さい額

たとえば、機械商社から搬送機一式で税別1,180万円の見積をもらい、「補助金で半分くらい出ますよ」と言われたとします。半分なら590万円ですが、この制度で戻ってくる額は見積書の金額だけでは決まりません。次の4つの上限をくぐります。
1つ目は、従業員数で決まる補助上限額です。2026年3月19日の制度改定でこの額が上がっています。
従業員数 補助上限額 大幅な賃上げを行う場合 5人以下 500万円 750万円 6〜20人 750万円 1,000万円 21人以上 1,000万円 1,500万円
チラシにある「最大1,500万円」は、この表の一番下、従業員21人以上で賃上げ要件も満たした場合の数字です。
2つ目は、購入価格の2分の1です。補助率は「1/2以下」と書かれています。1,180万円なら590万円、というのはこの段の計算です。 3つ目は、製品ごとに事前登録された補助上限額で、見落とされやすい上限です。公募要領は「製品本体に対する補助額は製品毎に事前登録されている額を上限として申請することができる」と書いていて、補助率の欄には次の注記があります。省力化製品の購入価格が製品毎に設定された補助上限額の2倍を上回る場合、補助率は1/2未満となる。
同 公募要領 2-1(1)表の注記3
「1/2以下」の「以下」はここで効きます。1,180万円の機械でも、その製品に登録されている補助上限額が400万円であれば、戻るのは400万円です。率にすると約34%になります。
この製品ごとの上限の決まり方も公表されています。中小機構の販売事業者向けページには、製品を登録するときの説明として「当該製品の販売実績がある:販売実績額の1/2が製品本体の補助上限額となります」「当該製品の販売実績がない:事務局が定めた額が製品本体の補助上限額となります」と書かれています(販売事業者向け)。
登録は製品と販売事業者の組み合わせで行われるので、同じ機械でも、どの販売事業者から買うかで、この3つ目の上限が変わることがあります。付き合いのある商社で決めてしまう前に、一度確かめておくと安心です。
4つ目は下限で、補助額が25万円未満になる申請はできません(借用に要する経費を補助対象とする場合を除く)。小さい機械を1台だけ、という使い方はできない作りになっています。ここまで分かると、営業に聞くことは3つに絞れます。その機種の省力化製品番号は何番か。御社はその製品の登録販売事業者か。その製品に登録されている補助上限額はいくらか。この3つが分かれば、自社の持ち出しがおよそいくらになるかを紙に書けます。
カタログ注文型の申請の流れ|販売事業者と共同で申請する
カタログ注文型は、中小企業だけでは申請できません。販売事業者と共同で交付申請を行う仕組みで、両者は事業の実施について連帯して責任を負います。
- カタログから製品と販売事業者を選び、その販売事業者に「この補助金で申請したい」と連絡する
- 打診を受けた販売事業者が要件を確認する
- 共同で事業計画を作り、電子申請システムから一緒に申請する
申請の入口は販売事業者の側にあるので、中小企業が単独で申請画面にたどり着くことはありません。申請にはGビズIDプライムアカウントも必要です。取得には日数がかかるので、製品を選ぶのと並行して進めておくと待ち時間が減ります。
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制度は要件も締切も年ごとに変わります。自社が対象に入るのか、いまから動いて間に合うのか。判断に必要なのはたいていこの2つで、そこだけ確かめるための時間として使ってもらって構いません。
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カタログ注文型で補助対象外になる条件
公募要領には、審査で落ちるのではなく、そもそも条件に合っていないという規定が並んでいます。中小企業で引っかかりやすいのは次のものです。
- 製品本体の単価が50万円未満のもの。購入に係る製品本体価格は、単価50万円以上でなければなりません
- 1回の申請で2種類以上の製品を買うこと。「1回の交付申請で複数種類の製品を申請することはできない」と書かれています
- 設置や運搬の費用が本体価格の2割を超える分。導入経費は製品本体価格の2割が上限です
- 交付決定より前の発注・契約・支払い。いかなる理由であっても事前着手は認められません
- 中古品。補助対象外の経費として明記されています
- 1次産業(農業・林業・漁業)である事業。取り組む事業がこれに当たる場合は補助対象になりません
- 新規事業。「本事業は省力化を目的とすることから、新規事業は対象とはならない」とあります
- すでに持っている製品の置き換えで、省力化の効果が出ないもの
- IT導入補助金と同じ業務プロセスに入れるもの。補助対象経費が重複していなくても、同じ業務プロセスに省力化製品を導入するものは重複受給として扱われます
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の交付決定から10か月を経過していない場合。過去3年間に2回以上その交付決定を受けている場合も対象外です
制度の名前がどれも似ていて、自社がどれに当たるのか分からなくなることもあると思います。2026年度の制度の並びと締切はDX補助金2026の一覧|パソコンは対象?締切と注意点に整理してあります。
カタログ注文型の申請要件|人手不足の理由と保険の義務
人手不足の理由は4つから選ぶ。4つ目は審査が遅くなる
申請では、省力化を進める必要があることを、次の4つから1つ選んで示します。
- 直近の従業員の平均残業時間が30時間を超えている
- 整理解雇によらない離職・退職で、従業員が前年度比5%以上減っている
- 採用活動を行い求人を掲載したが、充足には至らなかった
- その他、省力化を推し進める必要に迫られている
公募要領は、4つ目は例外的な扱いになると書いています。省力化投資の必要性をより厳格に審査するため、場合によっては追加書類の提示を求めたうえで、採択結果の通知が大幅に遅れる可能性があるとされています。上の3つのどれかに当てはまるなら、その証拠になる書類(時間外労働時間の記録、求人サイトのキャプチャなど)を先に用意しておくほうが早く進みます。
補助額が500万円以上なら保険への加入が必須
取得する省力化製品に対する補助額(導入経費を含む)が500万円以上になる場合、事業計画期間が終わるまで、火災や自然災害による損失に備えた保険または共済への加入が必須になります。保険金額は補助額以上であることが条件です。
この保険料は補助対象外です。実績報告のときに加入を示す書類を出す必要があるので、資金の計画に入れておいてください。500万円未満の場合も、加入は強く推奨されています。カタログ注文型の採択後の報告と賃上げの要件
補助金が入って終わりではありません。交付決定を受けてから3回目の効果報告を出すまでが事業計画期間で、その間、次の宿題があります。
- 補助事業終了後3年間、毎年の効果報告(省力化製品の稼働状況、決算、従業員数と労働時間、給与支給総額と事業場内最低賃金)
- 労働生産性を年平均成長率3.0%以上向上させること
- 実地検査。実績報告を出してから効果報告期間が終わるまでの間に、製品が事業所にあることを確認されます
- 財産処分の制限。一定の年数を経過する前に売却や破棄をするときは、事務局の承認と納付が要ります
補助上限額の引き上げ(表のカッコ内)を使う場合は、さらに賃上げの目標が付きます。事業場内最低賃金を3.0%以上、給与支給総額を6%以上、その両方を補助事業実施期間の終了時点で達成する計画が必要で、あらかじめ従業員に表明していることも条件です。達成できなかったときは、引き上げをしなかった場合の額まで減額されます。
2回目以降の申請は、もう少し重くなります。労働生産性の目標は年平均3.0%ではなく4.0%になり、前回の申請時点から事業場内最低賃金を3.5%以上(前回から2年以上経っていれば7.0%、3年以上なら10.5%)上げていることが必要です。
「省力化」と聞くと、機械を入れたら誰かに辞めてもらうことになるのでは、と気になる方も多いと思います。制度の側は逆向きで、主として従業員の解雇を通じて労働生産性を向上させる事業は補助対象外とされ、省力化を通じて人員整理・解雇を行っていた場合は補助金の返還が発生することがあります。この点は省力化投資補助金とは?補助上限・補助率と申請できない条件に詳しく書きました。
カタログに載っていなかったときの選択肢
自社の工程に当たるカテゴリが無かった場合、行き先はいくつかあります。
1つは同じ補助金の一般型です。カタログを使わず、その会社の業務に合わせて専用に設計されたオーダーメイド設備を対象にしています。ただし補助率や上限額、申請の手間が変わり、既製品を1台買うだけの事業は一般型では対象外です。判断の順番は省力化投資補助金とは?補助上限・補助率と申請できない条件にまとめてあります。
入れたいものが機械ではなくソフトウェアやクラウドサービスなら、この制度ではなくデジタル化・AI導入補助金2026|旧IT導入補助金の締切と申請の話になります。設備投資で新しい製品やサービスを作る方向なら、9月30日から受付が始まる制度があり、日程と要件はものづくり補助金2026|新制度の第1回は10月30日締切に書きました。
時間の面で注意があります。公募要領は「本事業は、令和9年3月末頃までの間に補助事業の申請を受け付けるものとする。またカタログへの登録は、公募受付期間終了の半年前程度まで随時行われるものとする」と書いています。いまカタログに無い製品が、これから載る余地は残り少ないということです。登録された製品・製造事業者・販売事業者の登録有効期間も令和9年9月末までなので、「そのうち載るかもしれないので待つ」という判断は取りにくくなっています。
カタログ注文型に締切日はありませんが、一般型のほうには回次ごとの締切があります。両方の日程は補助金・制度の締切カレンダーにまとめました。
カタログ注文型で見積を取る前に確認すること
- 省力化製品検索を開いて、自社の工程に当たるカテゴリがあるか
- 入れたい機種がカタログに載っているか。省力化製品番号は何番か
- その製品に登録されている補助上限額はいくらか。付き合いのある商社は登録販売事業者か
- 4つの上限のうち一番小さいものはどれか。自社の持ち出しはいくらになるか
- 補助額が500万円以上になるなら、保険料を織り込んだか
- 人手不足の理由を、4つのうち上の3つのどれかで示せるか
- 3年間、労働生産性の目標と報告を続けられるか
引っかかるところがあるなら、今回は見送るという判断も十分ありえると思います。受付は令和9年3月末頃までなので、次の期にずらす余地はまだあります。
制度の一次情報は中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)の公式サイトにあります。条件は改定されることがあるので、申請の前には必ずその時点の公募要領を開いてください。ここで挙げた数字は、2026年9月23日時点で最新の公募要領(令和8年3月19日改訂版)と公式サイトの記載によります。
まとめ
- カタログ注文型は、国が登録した製品のリストから選んで買う方式。まず省力化製品検索で自社の工程に当たるカテゴリがあるかを見る
- 補助額は、従業員数の上限・購入価格の1/2・製品ごとの登録上限のうち一番小さい額。25万円未満の申請はできない
- 申請は販売事業者と共同で行う。製品番号・登録販売事業者か・登録上限額の3つを営業に聞く
- 補助額500万円以上は保険加入が必須。採択後は3年間の効果報告と労働生産性の目標が続く
- 受付は令和9年3月末頃まで。カタログへの新たな登録の余地は残り少ない
カタログに良さそうな機械が載っていても、それが自社で一番詰まっている工程に当たっているとは限りません。機械を入れる場所がずれていれば、人手の足りない場所は足りないままです。どの作業に投資を当てるのが正しいのかは、設備を売る側にも、申請を支援する側にも聞きにくいことだと思います。私たちデジタル屋さんは設備を売っておらず、申請の代行もしていないので、そこだけを外から見る形でも構いません。相談の予約はこちらから取れます。
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